Shroud of the Avatar: 2013年を振り返って


Shroud of the Avatarの発表


2013年3月8日にShroud of the Avatarが公式に発表されKickstarterでの出資募集が始まりました。(現在は終了。公式サイトで出資募集は継続されています。詳しくはこちら
"Shroud of the Avatar"はリチャード・ギャリオットがおくる"Ultima Onlineの精神的続編"と大々的に銘打たれ、SotAはオンラインRPGであること、ストーリー的にUltimaとつながりがあること、さらにオンラインRPGでありながら"フルプライスのシングルプレイヤーRPG"であることが示唆されました。
重厚なストーリーと世界感を体感できるシングルプレイRPGのボリュームと、Ultima Onlineの膨大なマルチプレイコンテンツを合わせ持つ、まさに究極のロールプレイングゲームタイトルとして、Shroud of the Avatarは発表されたのです。

プロジェクトの発表後、リチャード・ギャリオットをはじめ、開発チームのメンバーはライブストリームの動画配信に積極的に参加してゲームの情報をリアルタイムでファン達に公開し、ファンからの質問には答えられる限り丁寧に回答をしてくれていました。
(参考:Portalarium YouTubeチャンネル
また、ライブストリームの動画に映るリチャード達の背景には、UOのパッケージ画像やブリタニアの地図、Ultimaシリーズのタペストリー等、これでもかというほどUltimaやUOと関連するアイテムが飾られています。
Ultimaの商標こそ冠していないが、俺達の作るこのタイトルこそがUltimaの真の続編だ!という、リチャードのメッセージが伝わってくるようでした。

しかしこのShroud of the Avatarというタイトルは以前からコードネーム"Ultimate RPG"としてそのコンセプトが発表されていました。
SotAの発表より2年ほど前からPortalariumのウェブページにその概要が記載されています。
https://www.portalarium.com/index.php/products/ultimate-rpg?id=93

私も一度目を通したことがあり、その時、これはUOの続編以外の何ものでもない、と予感したことを覚えています。

またその一方でPortalarium社は平行してUltimate Collectorというソーシャルゲームを開発していました。
これはUOのアイテム収集とアイテムトレード、さらにハウジング部分のエッセンスを凝縮したようなゲームで、Facebookと連携してユーザー同士でアイテムを売り買いし、自分の箱庭を自在にデコレーションすることが目的となっています。
まさにUOのハウジングをそのままパワーアップさせたような内容ですが、開発は難航し結局は開発中止という結果になってしまいます。

Ultimate RPGに関してはリチャード・ギャリオットがFacebookで発表した"究極のRPGの条件"という投稿を、ネコはうす管理人のぱらでぃん氏が翻訳して下さっています。ぜひご覧下さい。
http://blog.nekohaus.net/20111110.html

Ultimate Collectorのゲームコンセプトに関しても、同じくぱらでぃん氏のブログにリチャード・ギャリオットのインタビュー翻訳記事があります。
興味のある方はこちらも合わせてご覧下さい。
http://blog.nekohaus.net/20120630.html

どちらも大ボリュームの翻訳記事で、氏の仕事には頭が下がります。
どうもありがとうございます。

この2つのタイトルに共通する重要なコンセプトとして、仮想世界での居住とその世界でのコミュニケーションを挙げることが出来ると思います。
ハウジングはSotAでも目玉のコンテンツとしてとらえられており、アルファテスト時にもいち早く実装が為されました。

生活型MMOというジャンルを確立したUOは伝説のタイトルとして今も語り継がれていますが、そのコンセプトを受け継いだ現行タイトルはほとんど存在しません。
国産のオンラインRPGタイトルではMaster of EpicやFF14、ドラクエXなどもハウジングのコンテンツを備えていますが、いずれもインスタンスという住宅専用の隔離空間でのみ家を建設出来るシステムになっています。

UOでは世界のフィールド上の平野であればどこでも誰でも家を建てることが出来ました。
SotAではフィールドは世界マップ画面にとって変わられたので、野外に家を建築することは出来なくなりましたが、代わりに街の中にプレイヤーが家を建てられるスペースが用意されました。
このプレイヤーハウス用のスペースと街のNPC居住区とはシームレスに行き来することが出来ます。
これにより、街の景観のひとつとしてプレイヤーハウスが溶け込むことになり、ハウスデコレーションで通行するプレイヤーの目を楽しませたり、NPCベンダーを設置してのショップ経営を行うことが可能になります。

他のオンラインRPGのようにひたすらキャラクターのレベルを上げたりレアモンスターを狩るだけでなく、その世界をのんびり散歩したり、色んな街のプレイヤーショップをたずねてウインドウショッピングをしてみたり、街角でおしゃべりに興じたり、はたまた街頭に現れた奇人変人のパフォーマンスを見物してみたりと、生活型オンラインRPGは何気ないプレイヤーの行動全てがプレイコンテンツとなっていくのです。

SotAの課金方式


Shroud of the Avatarはフルプライスのロールプレイングゲームタイトルです。
現在$45を出資すれば、ゲームの製品版のダウンロード権(DL開始は14年秋を予定)とアルファテスト・ベータテストの参加権を得ることが出来ます。
また、サーバーに接続する為の料金も要りません。
$45ポッキリでUltimaの様な歯ごたえのある大型シングルプレイヤーRPGと、UO以上のコンテンツを備えたマルチプレイの両方を楽しむことが出来ます。

それ以外の課金コンテンツには主に
・家の土地
・家のモデル
・ハウスデコレーション用のアイテム
・ユニークな服飾用アイテム
・素材採集の効率を高めるアイテム

などがあります。
いずれの課金要素も、ゲームバランスに直接影響を及ぼすものではないと公式のメッセージが発表されています。
参考:SotA公式アドオンストア(ゲーム内のアイテムや土地など、ゲームコンテンツの販売)
参考:SotA Marchandise Store(Tシャツ、コレクターズコイン等の物品販売)

課金要素の中でとりわけ高価なのはプレイヤーハウス用の土地です。
一番安いものでも$200、高いものでは$1050のものもあります。
もちろんゲーム内でお金を稼ぎ、ゲーム内の通貨で土地を購入することも出来るのですが、SotAの世界ではプレイヤーハウスの土地は有限で、よい土地ほど早い者勝ちで埋まっていきます。
よって公式ストアで土地の権利を購入すれば、ゲーム開始時から土地の権利書をもってスタート出来るので比較的容易に自分の条件に合う土地を所有することが出来るでしょう。
SotAの運営資金は定額課金で集めるのではなく、ゲーム本体のパッケージとゲーム進行に必要のない贅沢品の販売によってまかなうスタイルのようです。
開発初期からハウジングにここまで力を入れていたのは、この新たな収益スタイルを確立する為だったと言っても差し支えないでしょう。
まずUltimaの様な土台のしっかりしたゲームの舞台をこしらえ、プレイヤーはニューブリタニアの住人としてそこでの生活を楽しんでもらえるようにします。
そしてゲームにすっかりハマってサイフのヒモがゆるんだところで、これら豪奢な課金要素を購入してもらおう、という話のようです。
もちろん、サイフのヒモが固い人はゲームのパッケージ代金以外ビタ一文払わずに、ゲームをエンディングまで楽しむことも出来ます。
ゲームの本質に関するコンテンツには課金は為されない、というのが公式からの発表です。

Kickstarterプロジェクト


Portalarium社はShroud of the Avatarの開発費を捻出するために、出資募集サイトKickstarterでユーザーから資金を募りました。
結果は大成功で、たった一ヶ月で当初の目標の二倍以上である200万ドル以上の額を調達することが出来ました。
またユーザーは出資した額によってゲーム本体のほか、ゲーム内のアイテムや家の土地の権利、果てはリチャード・ギャリオット邸を見学する権利など等を得ることが出来ました。
また、Kickstarterの出資期間内に出資してくれたユーザーには住宅税を終身免除するなどの特別な待遇が与えられました。
すでに開発陣はこの時点からハウジングが大きな課金を見込める強力なコンテンツになると予想していたようです。
結果はズバリその通りになり、$3000を越える高額な出資枠も好調に売れ、急遽追加枠が用意されるほどの人気になりました。
リチャード・ギャリオットは、まだ完成してもいないゲームコンテンツの予約だけで、200万ドルを得ることに成功したのです。

大手ゲームパブリッシャーから開発資金の援助を受けてゲームを開発するのが従来のゲームデベロッパースタジオの在り方でした。
しかし今回のSotAの開発ではその従来のモデルから脱却しました。
その理由として、パブリッシャーからの余計な注文でゲームコンセプトを曲げられたり、あるいは販促用の素材やムービーの製作といった、ゲーム開発と直接関係ない仕事でスケジュールを乱されたりといった心配が無いから、ということが挙げられています。
また、出資者=プレイヤーなので、ゲームの開発状況や仕様を公開することにより、開発時には見えなかったユーザー視点の率直な意見を聞くことが出来ます。
それらの意見は全て開発陣にフィードバックされ、よりよい、そしてユーザーサイドの視点を取り入れたゲーム開発が可能になります。

立場は違えど両者は共に面白いゲームが出来上がることを望んでいるので、ユーザーから直接出資を募るスタイルは今後ポピュラーな資金調達法になるかもしれませんね。

その後のゲーム開発状況


ゲームの開発状況は週一回のライブストリーム配信でユーザーにダイレクトに伝えられ、疑問に思った点はその場ですぐにチャットで質問することが出来ました。
またこのライブストリームでのやりとりをファンコミュニティがまとめてくれたり、あるいは動画での発言を全て文字に起こし、フォーラムでの議論のソースとして使えるようにしてくれたりと、ファン達の活動も非常に活発になりました。

当サイトも公式情報の翻訳にあたって、彼らファンコミュニティの働きに随分と助けられました。動画をまともに聞き取るのと、文字に起こされたものを読み進むのでは全然効率が違います。
熱心なファン活動はいまも続いており、ルーン文字フォントの作成、ゲーム仕様についての積極的な議論、ファンが作った3Dゲーム素材や楽曲の提供など、その内容は多岐にわたっています。

また、ゲーム開発も順調に進んでおり、三ヶ月ごとにゲームの開発進行の様子が分かるデモが公開されたり、八ヶ月目にはアルファテストが開始されたりするなど、今年の秋発売に向けて、延期の心配をいくぶんやわらげてくれています。
次回のアルファテストは現地時間で1月24日に開始されます。

2014年秋に向けての期待と抱負


今年はついにSotAが発売される年です。
13年12月に行われたアルファテスト・リリース1では、個人的にかなりの好印象を受けました。

まず、インターフェースが使い慣れたUOのそれとほぼ同一のデザインであること。
そしてグラフィックレベルが現行のゲームと比べ遜色がないこと。
さらにキャラクターモデルがUOのような、ソフトで親しみやすい造形のものであったこと。(洋ゲーにありがちなヘンにゴツかったり、バタ臭い絵面ではなかったこと)
また、ハウジングシステムがUOの正統後継かつ、極めて自由度の高いものであったこと。
最後に、NPCとの会話にテキスト入力という古い手法を取り入れ、さらに現代風のアレンジを加えたこと。

これらのインプレッションは動画をご覧になれば納得していただけると思うので、ここでは詳細は割愛させてもらいます。
参考:当サイト記事Shroud of the Avatar アルファテストリリース1

個人的にSotAのゲーム仕様の中で最も期待しているのが、セレクティブ・マルチプレイヤーシステムです。
SotAでは以下の3種類のオンラインプレイモードをプレイヤーが任意に切り替えてプレイすることが出来ます。

・シングルプレイオンライン: 自分以外のプレイヤーは全てフィルタリングされる。
・フレンドプレイオンライン: フレンドに指定したプレイヤーだけが表示される。
・オープンプレイオンライン: 従来のMMORPGの様に多くのプレイヤーが表示されるが、全プレイヤーではない。

この中でも最も特徴的なモードはシングルプレイオンラインモードになるでしょう。
他のプレイヤーが一切出てこないので感覚的には普通のシングルプレイRPGそのものです。
しかし、街を歩けばプレイヤーがデコレートした住宅街が現れ、それらの庭先で他のプレイヤー達がクラフトしたアイテムや冒険から持ち帰った戦利品をNPCベンダーが販売しているかもしれません。
そしてそれらの品物を品定めしていると、オンラインで繋がっている見えないプレイヤーが横からその品物を購入していって目の前で売り切れになってしまうかもしれません。
またある日ログインすると、空き地だった場所に新しいお店がオープンしていたり、大邸宅が大農場に変わっていたりするかもしれません。

プレイフィールはシングルプレイそのものですが、オンラインのコンテンツはしっかり享受することが出来る、これがシングルプレイ・オンラインの醍醐味です。
もちろんたまには雑踏の中に繰り出してみたいと思ったら、プレイヤーはオープンプレイオンラインモードに切り替えて、銀行前の人混みに混じっていくことも出来ます。

自分の経験から話をしますと、UOでは銀行前で知り合いのプレイヤーとばったり出会ってしまい、私は鉱山にいって鉱石を掘りまくりたいのに、相手の立ち話に付き合わされたりして、"望まない対人コミュニケーション"を取らざるを得ない場面が多くありました。
気の知れた仲間内ならそれでもまだマシなのですが、そうでもない微妙な間柄であった場合は間を持たすだけの会話にお互い終始することになります。
同じゲームをプレイしていて、同じ街を拠点にしているのなら必ず何度も知り合いと顔を合わすことになり、それだけそのコミュニケーションにプレイ時間を費やさざるを得なくなるのです。
ギルドに所属していたプレイヤーならなおさらその傾向は強かったことでしょう。
もちろんそこから面白い出来事に出会うこともあるのですが、多くの場合は時間の浪費に終わってしまいます。
チャットが好きなプレイヤーならよいのですが、私はどちらかというとゲームコンテンツの消費に時間を割きたいタイプなので、面倒なコミュニケーションは出来るなら御免被りたいと思っていました。

こういった問題を解決してくれるのがシングルプレイヤーオンラインの最大の利点だと思っています。

私はSotAで何かしらお店を始めてみるつもりでいます。
シングルプレイヤーオンラインなら素材集めを誰にも邪魔される心配がなく、街でクラフトを行っている間もそれに集中出来ます。
また、お店に商品を並べておけば自動的に他のプレイヤーにも見えるようになるので、一度も他のプレイヤーと顔を合わすことなくオンラインで24時間アイテムを販売することが可能になります。
ただ黙々と作って売るだけで商人プレイが完結出来るのです。
さらにそこから店構えのインテリアやレイアウトに凝ってみるのも面白いでしょう。

そして気が向いた時だけオープンプレイオンラインで雑踏の街に繰り出し、同業者と情報交換をしたり、お店の宣伝をやってみたり、価値の高いアイテムの街頭販売を行ってみたり出来るわけです。
もちろんクラフトをしながら他の人の雑談に耳を傾けてみるのもいいですね。

そういったオンラインコミュニケーションのワガママを聞いてくれるこのセレクティブ・マルチプレイヤーシステムには、個人的に大きく期待しています。

日本でのSotAの認知度


これは意外なことに極めて低いようです。
先日のアルファテスト参加者の統計データでも日本は主な参加国の中で名前が挙がりませんでした。
昨年12月20日のUpdate of the Avatarから該当の箇所を引用してみます。

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国別の参加ユーザー数:
3969 -- USA
673 -- Germany
512 -- Canada
457 -- UK
369 -- NULL
343 -- Australia
165 -- France
158 -- Finland
128 -- Italy
100 -- Sweden

70以上の国から接続がありました。
エジプトやモルドバ、ペルー、ベラルーシ、ザンビア、ベトナム、レバノン、中国、タイ、カタール、その他数十ヶ国のユーザーがテストに参加しました。
NULLの項目はメトリックスシステムで接続元の国が判別出来なかったユーザーです。
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このデータから、日本の参加者は多くとも100人以下で、さらに
エジプト・モルドバ・ペルー・ベラルーシ・ザンビア・ベトナム・レバノン・中国・タイ・カタールといった各国々の参加者数よりもさらに少なく、"その他数十ヶ国のユーザー"に一絡げにされる程度の数であった、と言えます。
つまり多くて10人くらいだったのではないでしょうか。
もちろん、出資者自体はそれより多いとは思いますが、実際にSotAを認知しかつ期待を抱いている日本人のゲーマーは非常に少ない、ということです。
これはSotAのゲーム仕様に問題があるわけではなく、日本でのプロモーションが本格的に行われていない故の結果だとは思いますが、それでもUOという今なお膨大なユーザー数を抱えるタイトルの後継作がUOプレイヤーの間でほとんど認知されていないという事実には驚かされます。

当サイトは今後もShroud of the Avatarの情報を出来うる限り日本のユーザー・ゲーマー諸氏にお伝えし、日本での認知とヒットを願い活動していきたいと思います。
どうぞ本年もよろしくお願いいたします。

The False Prophet管理人 taka

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