8月末に開催された12時間ライブ配信の中のDeep Dive Hangoutの要約です。
動画の中から重要だと思われる情報をピックアップして要約を作成しました。
聞き取りや理解が不十分な箇所があると思いますが、どうか御容赦ください。
- Q: 9月に開催されるソルトレイク・コミックコン2015で、The Voidのデモが展示されるそうですね?
(SotAの共同ストーリーライターであるトレーシー・ヒックマンの息子、Curtis Hickmanは体感型VR「The Void」の共同設立者の一人) - トレーシー・ヒックマン:
Youtubeで公開しているデモビデオよりもずっと凄い体験ができますよ。ぜひVoidの展示コーナーにいって体感してみて下さい。
- リチャード・ギャリオット:
今までのゲーム史を振り返って見ると、過去に人気を博したビデオゲームタイトルは、斬新なシステムや新しい分野を開拓した点が評価されているタイトルが多かったように思う。しかし、純粋なストーリーテリングによって人気を博したというタイトルはまだまだ少ない。
私が思うに、ビデオゲームはストーリーテリングを展開する媒体としてはまだ黎明期にあり、成熟を迎えるのはこれからだと考えている。
ゲーム制作者として、またゲームを媒体にしたストーリーテラーとしての私の過去の仕事を振り返ってみると、ゲームデザイナーとストーリーライターは共同でストーリーを制作する必要性があると強く感じた。もちろん、ゲーム作品のストーリーライターを務めるには、ライターの才能だけでなく、ゲームに対して理解を持っていることが必要だ。
ゲームのストーリー構成は映画とは違い、プレイヤーはゲームワールドに対して能動的に干渉することができる。よって、ストーリーの作り方もリニアな脚本とは全く構成を変える必要がある。
我々のチームには、4人のストーリー担当のスタッフがいる。その一人であるスコットは、ストーリーライティングだけでなく、SotAの会話システムも担当してもらっている。また、コミュニティマネージャーのジーナもゲーム中の会話部分や本の内容を担当してもらっている。
過去のUltimaシリーズでは、ウォーレン・スペクター(※)と一緒に仕事をする機会があったのだが、彼は超一級のゲームデザイナーであるだけでなく、ストーリーテリングの才能も私よりもずっと素晴らしかった。
(※ Ultima Underworldの開発元。後のLooking Glass Studioの創立者(代表作: Bioshock、Deus Exなど)
今回、プロフェッショナルのライターであり、また長年の友人でもあるトレーシーと共に、このゲームのストーリーを制作できることを嬉しく思っている。
- トレーシー・ヒックマン:
ゲームという要電源媒体(デジタル)でストーリーを展開するということは、従来のアナログ媒体の制限を越えてストーリーを構成することができる、ということを意味しています。ノベルはテキストが情報の全てであり、映画はスクリーン上から得られる情報がその映画の全てなわけです。どちらにも長所があるわけですが、それらの長所はそれぞれのメディアのもつ制限の下にあって初めて機能するものであって、これらの媒体固有のメリットを、媒体の垣根を越えて共存させるのは難しいことです。
また、ゲームのようにプレイヤーがキャラクターに成り代わって世界にインタラクトすることもできません。さらにアナログメディアではストーリーが展開する舞台装置を作り上げるのにも制約が存在します。
その点デジタル媒体の場合は、まるで魔法のように舞台装置(Ultimaでいえばブリタニアに相当)を作り上げることができます。この舞台装置の作り手として、リチャードのことをマジシャンと呼んでも差し支えないでしょう。この上でリチャードはマジックを展開するわけです。
デジタル媒体のストーリーテリングの長所として、プレイヤーがその世界の中に入り込んで冒険を楽しむという要素があります。The Voidもそうですが、デジタル媒体は新しいテクノロジーが登場するたびに、そのストーリーテリングの手法も進化していきます。
- RG:
SotAというタイトルはMMORPGであるとともに、シングルプレイRPGでもある。
シングルプレイRPGの持つストーリーテリングの魅力をMMORPGとどうやって融合させるかは非常に難しい課題だった。理想としては、シングルプレイで体感したゲームの世界観を、マルチプレイ時に他のプレイヤーと共有できるものにしたいと思っている。
- Q: 一本の大きなリニアなストーリーに対して、プレイヤーの選択はストーリーにどういった変化を与えるのですか?
- まず、SotAは5部作の作品となります。
- 第一部: 導入部
- 第二部: 真実のクエスト
- 第三部: 愛のクエスト
- 第四部: 勇気のクエスト
- 第五部: 最後の部
- これらの第四部までは、徳を重んじるか否か、オラクルに対してどういうスタンスをとるか、他のプレイヤーとどういう関係を構築するかをプレイヤーは選択することになります、そして、それらの行動すべてが最後の展開に影響を与えるようになっています。
そしてそのエンディングは1つではなく、それぞれのプレイヤーごとに異なるものになるでしょう。
- TH:
ストーリーには最終目標が設定されており、その達成如何はストーリーの結末に影響を与えるでしょう。しかしそれと同時にプレイヤー個人にも目的が存在し、その個人的な目標を達成できるか否かも結末に影響します。
ですから、ストーリーとして設定されている目標は達成できなかったとしても、プレイヤー個人の目標は成就できた、という結末もありうるわけです。
逆に、最終的に世界を救うことができたとしても、プレイヤー個人の目標は果たすことができなかった、という展開も存在します。救済された世界の裏では、ある人物に悲劇が起こっていた、という終わり方もあるでしょう。
どのような媒体で展開するにしても、作品のストーリーには何らかの形で終わりがあります。しかし、ゲームのプレイヤーの遊び方には無数のパターンがある。我々はこの点に着目し、SotAのストーリーテリングとエンディングの仕組みを構築しました。
- Q: ゲームの最終的な目的とプレイヤー個人の目的では、どちらに重きが置かれていますか?
- ゲームワールドを構築する上で、プレイヤーに対して何かしら目標を与えるということは非常に重要なことだと思います。このフレームワーク(徳の3原理など)がなければ、ゲーム内の世界はただカオスなものとなるでしょう。しかし、そのフレームワークはプレイヤーの行動をただ縛るものではなく、ゲームワールド上でのプレイヤー同士の相互作用を促進するようなものにデザインしています。
- Q: PoTではない街、つまりソルタウンやオウルズヘッドなどのNPCタウンは、メインストーリーとどれくらい密接に関係していますか?
- これらのNPCタウンはメインストーリーが展開する拠点となります。また、PoTではメインストーリーが展開することはないでしょう。
- サイドクエストはどういった仕様になりますか?
- 基本的にどういった方法で解決してもメインストーリーには関係しません。ですが、サイドストーリーの進行には複数のルートを用意し、プレイヤーがどの手段を使っても、クエストを解決できるようにしています。
例えばQuest of Studentでは、アバタールは各地で本を集めることになるのですが、その一方でそれらの本を焼き捨てようとしているカオスサイドの人物に集めた本を引き渡すこともできます。 - サイドクエストは理想的な選択肢を選ぶことで得られる実利よりも、解決方法に応じたストーリーの展開を楽しむことに重きをおいています。
- クエストの形式はダイアログベース(お使い系)のもの以外にもありますか?あるイベントに遭遇する、といったものは?
- 現在のところ、NPCのスケジュールを制御するメカニズムとそのツールセットを開発しているところです。これを使えば、現行のお使い系以外のクエスト、たとえば突発的に発生するリアルタイムのイベントなどを実装できる予定です。
- 実装を予定しているシーンのひとつにBlood Riverというシーンがあるのですが、そこではエルフと人間の間で軋轢が発生しています。プレイヤーは人造生物というエルフの複雑な出自と人間との関係の間に立つ立場になり、双方のバックグラウンドを考慮しながら物語を進めていくことになるでしょう。
これはUltima 6のガーゴイルとの関係のような、相手の外見や表面的な事象では到底分からない複雑な事情が織り込まれたものになります。
#ちなみにこの12時間のハングアウトでは、出資金が$2500集まるごとにスタッフがショットグラス1杯の酒を飲むというルールになっています。
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