Lord British Interview Part 3: ゲームデザイナーの資質について

WarCry.comのロード・ブリティッシュインタビューのPart3です。
自身のゲーム製作の体験を元に、若きゲームデザイナー達へ貴重なアドバイスを授けています。
http://www.warcry.com/news/view/129727-Lord-British-Interview-Part-3-Seeking-Greatness-in-a-Game-Designer

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Original Article by Jon Prosperi | 18 November 2013 11:48 pm

この記事をご覧の方の中に、ゲームデザイナー志望の方はいらっしゃいますか?
今回のリチャードのインタビュー記事はきっとその助けになるはずです!

ロード・ブリティッシュことリチャード・ギャリオットにインタビューする機会を得られました。
いままで代表作であるUltimaシリーズをはじめ、多数のソーシャルゲームやロールプレイングゲームタイトルをリリースしています。
先週のインタビュー記事では、彼の現在進めているゲームプロジェクト"Shroud of the Avatar"について、そしてゲーム業界の現状と今後について語ってもらいました。

ご存じの方もいるかと思いますが、リチャードはすでにゲームデザイナーとして伝説的な人物となっています。
リチャードは業界歴30年以上の大ベテランで、彼のリリースするタイトルは常にゲームデザインの最先端を切り開くものでした。
そして彼はUltima Onlineという金字塔タイトルとともにMMORPGという新しいジャンルを打ち立て、ゲームデザイナーとしての名声を揺るがぬものにしました。
彼のゲームデザインの根底に流れる思想とは何か?そしてこれからのゲームデザイナーに必要とされる資質とは何か?というテーマでインタビューを進めていきたいとおもいます。

まずリチャードはゲームデザイナーという職業が、他の分野の職業と決定的に違っているポイントを指摘しました。

RG:
"ゲームデザイナーとしての仕事は、そのクオリティを客観的に評価することが難しい"


ビデオゲームを構成する三要素に、Programming、Art、Design(設計・思想)がある。
まず、アートとプログラミングについてだが、これは大学にも専門の学部学科があるし、その学位を取得して専門家になることも出来る。
もちろん、その分野で腕が立つならば、よい職を得られるだろう。
問題はゲームデザインだ。この分野では、どうやってその力量を示せばいいだろう?
例えば、あなたが私のオフィスに来て、自分のデザイナーとしての力をアピールするとして、その時一体どういったことを実演すればいいだろう?
オリジナルのD&Dキャンペーンシナリオを持ち込んでみる?
それもいいかもしれないが、私はそれではアピールは不十分だと思う。
ゲームデザイナーとしてその力量を示すことは、根本的に難しい問題なんだ。


リチャードは今後出てくるゲームデザイナー志望の方に、デザイナーとして成功するためのキー要素についてアドバイスをしてくれました。

RG:
ゲーム製作プロジェクトのマネージメントには様々なスキルを要求される。
まず、製作進行の責任者として、開発の進展状況と予算について把握しておかなければならない。大変な仕事だが、これは経験や過去のケースから学べることが多い。
最も難しい問題はゲームデザイン(設計・思想)だ。
ゲームデザインをするに当たって、アプローチの方法はたくさんある。

まず、デザイナーのゲーム製作へのアプローチ方法について大きく二つに分けてみることにしよう。

一つ目は、これは生来の才によるところが大きいものだが、"本物・本質を見抜く洞察力"を用いたアプローチだ。
映画でいえば、監督や美術分野のポジションだね。
ただ机の前に座って、"魅力的で美しいゲーム"をクリエイトすることが出来る人達がいる。
(原文:Some creators have a gift of insight on what a great game is. Like an artist or a director for a film, some people can just sit down and craft a beautiful game all by themselves,)


しかし、リチャードはこう言います。

RG:
私にはその才が無かった。少なくとも、横でそういった彼らの仕事を見ていると、魔法か何かのようにしか思えないんだ。


二つ目の、リチャードの取ってきたアプローチの方法は、ひたすら試行錯誤を繰り返すというものです。
まず試作品を作り、テストをする。粗や改善すべき点があれば修正する。
その繰り返しが彼のやり方です。

RG:
まず、面白そうなアイデアを思いついたら、チープなプロトタイプを作ってみる。
そしてテストプレイと試作を繰り返す。
それが納得のいくものに納まったら、ゲームへ採用する。
数あるアプローチの方法の中でも、この方法は確実な進展が見込める。
しかしそれに伴う必要な手数と労力は多く、このスタイルで製作しているデザイナーは実に少ない。


しかしリチャードは言います。

RG:
創作における反復作業への耐性、これは資質の一つであり、それは時間とともに確実にデザイナー個人のスキルに厚みをもたらすものになるだろう。


またそれとおなじくらいゲームデザインにおける重要な要素があります。
それはゲームを作りたいという情熱です。

RG:
"創作の反復作業に耐える力と並んで大切なこと、それは、"こういうゲームを作りたい"という、想い(desire)をもつことです。"


ゲーム製作において、デザイナーの情熱を作品に込めるということは、偉大なゲームをクリエイトする為に欠かせないエレメントの一つといえるでしょう。

RG:
例えば、街を一つ作ることを考えてみよう。
ただ、街を作る。これではダメ。何か目的意識をもって製作に当たるべきなんです。

「目的意識を持って?具体的にどうすればいいの?」

とよく尋ねられます。

具体的にはどうこう、ということは出来ない。
けれど、まず、手始めにリサーチから始めてはどう?とアドバイスします。
色々なものに興味を持ち、そして自分の性向にあったものを見つけ、街のテーマをまず決めるんだ。
街のレイアウトなんかは後回しにして、まず、この街を訪れるユーザーはどういう風にここを利用するだろうか、といったことをはじめに考える。
実際にゲームプレイするユーザーの目的を考えてあげるんだね。
街の出入り口一つをデザインするにも、熟考が必要だ。
そのレイアウトや外観から、この街がどんな雰囲気を持っているかが決定されるからね。


また、デザイナーの人柄がゲームデザインに滲み出ることについても言及しています。
リチャードを例にとれば、好奇心の旺盛さ、ディティールへの注意力や拘り、不思議なことに対する探究心といった人物特性ですね。
リチャードはプレイヤーハウスの敷地をブロック単位で区切るアイデアを出しました。

RG:
ハウジングにおいて、お隣さんという概念を作りたかったんです。
となると、家同士が隣り合っていなければいけませんよね。
つまり、1ブロックだけ孤立した箇所が出来てはいけないんです。もし3軒ならんでいるところに、直角に道路を通してしまうと孤立したブロックが出来てします。
また、家のブロックに対して表と裏手の通りに両方道路が通っているのも問題視せねばなりません。余計な道路がある分だけ、住宅地のスペースが間延びしてしまいますからね。
そういったゲーム内の細かい都市計画にまで配慮することにも、人物の拘りや注意力が影響するのです。

あなたの作るゲームを価値あるものにしたいなら、そのデザインに"Meaning(意味・根拠・存在意義)"を持たせなさい。
あなたの頭の中にある考えや思想は、Meaningとしてかならずゲームの節々に滲み出てきます。

Meaningを意識し、情熱をもってゲームワールドを創造すれば、何が必要で何が不必要かが見えるようになる。あなたのデザインしたゲームが、"正解"であるかどうかが分かるようになるんだ。
人を惹き付けるゲームワールドは、必ず一貫したテーマを背景にもっている。
そしてリアル世界と同様に、そこでの利便性を考えて意図的かつ合理的な構造にするために、人の手が加えられているのが分かるだろう。

目的意識は最終的に合理的なデザインへと結実する。
重要なのは方法論ではなく、目的意識を強くもつことなんだ。


ロード・ブリティッシュから最後のアドバイスとして、とにかくゲームをたくさん作ってみること、を挙げています。
パーフェクトはプラクティス(練習・実践)の積み重ねから成ります。
彼がリリースした16のタイトルの影には、ボツになった30以上の未発表のゲームがあります。
また、プログラミングの習得やゲーム製作のための環境としてUnityを推奨しています。

ロード・ブリティッシュのゲームデザイニングに対する知見には大きな感銘を受けました。
彼のゲーム哲学を深く知ることが出来たのです。
そして今回のインタビューから、現在製作進行中のShroud of the Avatarにも彼の思想が色濃く反映されていることがよく分かりました。

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