全訳 The Geek's Guide to the Galaxy: リチャード・ギャリオット ロングインタビュー Part 2/2

インタビューの概要とインタビューの録音された音声ファイル
http://www.wired.com/2014/03/geeks-guide-richard-garriott/

録音の文字起こし
http://www.lightspeedmagazine.com/nonfiction/interview-richard-garriott/


Thr Geek's Guide to the Galaxyのリチャードギャリオットインタビューの全訳の後半部です。
前半部はこちら



----------------------------------------------------------------------

GGG:
私が興味深いと思うのは、あなたはいわゆる信心深い人ではないということです。
実際に、Ultimaでは信仰の負の側面を取り上げられています。
あなたの生み出した8徳のうちのひとつに"Spirituality"が存在するにもかかわらず、です。

RG:
ええ、あなたのおっしゃる通りです。
しかし、いわゆるスピリチュアル、という意味においては、しかもあくまでその狭義においてですが、私はスピリチュアルな人間だと思っています。
私のいう"スピリチュアル"とは、これはUltimaの中でも表現してきたことですが、信仰(religious)のそれではないんですね。
神へ向けての信仰ではなく、また、魂(soul)といったものに対してのものでもありません。
私は、人生を生きる上においての内省的な姿勢において"スピリチュアル"だと自負しています。
いわゆる超人的なものに対する信仰ではないんです。
あくまで自分の人生において適応できるであろう、地に足のついた感覚(sense)において、私はスピリチュアルであると考えているのです。
私のいうスピリチュアルというワードの定義は一般的ではないですが、その意味を以上の狭義の範囲内に限るならば、私はポジティブなスピリチュアルパーソンであると、自信を持って答えることができます。

GGG:
あなたの最新のプロジェクトであるShroud of the Avatarについてのお話も伺わせて下さい。
SotAは従来のUltimaシリーズとはどう関連し、そしてどういった相違点があるのでしょうか?

RG:
私は長い間、ずっとロールプレイングゲームの開発に携わってきました。
ざっと40年のキャリアになります。
そしてその間に私の手がけた作品も含めて、たくさんの素晴らしいゲームがリリースされてきました。
しかし、当時いくら素晴らしいゲームと評価されていても、結局は時間という淘汰の前に忘れられていくタイトルも多くあります。
しかしその中でも輝きを失わないタイトル、そして現在でもそのエッセンスが通用するであろうタイトルを挙げることができます。
それはUltima 4、7、UOです。

Ultima 7では仮想世界のシミュレートを実現することができました。
ゲーム中に存在する看板の文字を読んだり、街灯を点けたりすることができます。
風が吹いて、店先にかかっている看板が揺れていたりすることもあります。
ゲーム中に存在するすべてのオブジェクトにアクセスが可能で、拾いあげたり、持って行ったり、薬瓶に中身を注いだり捨てたりといったことも自由にできるんです。
仮想世界のディティールを追求する、という点においてUltima 7は素晴らしい功績を残したと思います。

次に、Ultima 4に関してですが、この作品の素晴らしい点は、徳の概念をゲームシステムとして昇華させたことにあります。

最後にUOになりますが、このタイトルの最大の功績は、自由度の高いマルチプレイヤー環境を実現できたことにあるでしょう。
冒険者としてお宝を求めて探険に出かけることもできますし、生産者としてさまざまなアイテムをクラフトして、冒険者達に必要な品物を提供することもできます。
プレイスタイルはすべてプレイヤーに一任されています。
しかし、すべてのプレイヤーはシステム的になんらかの形で深く影響しあっているのです。
UO内で充実した体験ができるかどうかは、他のプレイヤーとどういった経験ができたか、ということに大きく依存するのです。

過去のタイトルから学び得たこれらのファクターは、SotAの基盤のひとつとなるでしょう。

そしてさらに私はSotAによって、ロールプレイングゲームを次の世代へとステップアップさせていきたいと思っています。
現行のRPGタイトルのプレイフィールは、非常にブレインデッドなものとなっています。
ゲームの世界に降り立つとすぐにちかくの人の頭上に"!"マークが出現し、プレイヤーはこの人物と話せと促されます。
しかし、促されるままに会話ウインドウを進めていっても、プレイヤーの頭にはちっともその内容が残りません。
ただポチポチとボタンをおして会話を押し流し、選択肢を選ぶ場面になっても字面を見て無難なものを選択し、ふたたび会話ウインドウを繰っていく作業へと戻ります。
会話の内容などは実際どうでもよく、クエストログを見て、画面上のガイドの矢印を頼りに次の目的地のポイントへ移動していけばよいのです。
そしてモンスターを倒せ、といったおきまりのクエストを達成してレベルを上げていくわけです。
親切なことにちゃんとプレイヤーキャラクターのレベルに対応したクエストが用意されており、そのクエストをなぞっていけばムリなくレベルアップすることができます。
レベルがあがれば、その次のレベルに合わせたクエストがやってきます。
その繰り返しでゲームを進めていくわけです。

こういった半自動的なゲーム展開では、プレイヤーはゲームのストーリーに注意を払うこともなくなり、ゲーム体験そのものへの没入感も失われてしまいます。
冒険をしているようでそうでなく、起こった事件を解決している、といった実感も得られません。
もはやゲームの世界で何がおころうとも、プレイヤーはおいてきぼりとなってしまうわけです。
だからこそ、私は現行のロールプレイングゲームを"ロールプレイするゲーム"へと回帰させたい。
新しいスタイルのNPCとの会話システムや、冒険を通して得た知識が積み重なっていく感覚をプレイヤーが実感できるような仕組みをつくり、SotAで新しいRPGの時代を開拓する。

GGG:
Ultimaシリーズのセールスポイントとして、重厚なストーリーと綿密な世界観を挙げることができると思います。
SotAのストーリーはどういったものになるのでしょう?

RG:
ええ、ストーリーは非常に重要なポイントです。
今、Ultimaを振り返ってみても、シリーズそれぞれの作品のストーリーに、意義深いコンセプトを設定することができたと思います。
しかしながら、ストーリーコンセプトの設定こそ誇れるものの、実際のストーリーを展開させることにおいては苦闘することが多かったです。
私はプロフェッショナルなストーリーライターではありませんでしたからね。
私がゲーム業界においてインタラクティブな世界を描く人物としての評価はおいておくとして、純粋な物書きやストーリーテラーとして考えた場合、やはり私はそれらのプロに比べて見劣りするに違いありません。

ですから、今回のSotAのストーリーは、友人であり作家のトレーシー・ヒックマンに協力してもらっています。
彼とは30年来の友人で、別のプロジェクトでストーリーの共作を行ったこともあるんです。
ただし、SotAのようなビッグプロジェクトで協力するのは初めてです。

トレーシーにSotAのストーリーの仕事を持ちかけたときの話です。

"ヘイ、トレーシー。私の新作のゲームのストーリーを一緒にやらないか?"

彼は非常に興味を示してくれて、情熱をもって"YES"と答えてくれました。

また、SotAの背景を描いたプロローグ的な小説"Blade of the Avatar"の執筆をKickstarterのストレッチゴールとして設定しました。

SotAは五部作となっており、最初のエピソードは"Forsaken Virtues"と銘打たれています。
プレイヤーはロード・ブリティッシュの待つ世界へ入っていくことになるわけですが、長い年月の経過により、徳は依然として知られているものの、人々はそれを古めかしいものとして認識しています。
プレイヤー(アバタール)は再び自ら徳の大切さを示すために行動を開始することになります。

さらにこの世界にはオラクルと呼ばれるあらたな勢力が存在します。
オラクルはストーリーにも再々深く関わってくる存在になるでしょう。
そしてオラクルのキャラクターは、アレイスター・クロウリーに似た部分が多くあると思います。
ええ、あのアレイスター・クロウリーです。
自ら最高の魔術師を自称し信じていたあの人物です。
オラクルもそういった種類の存在といえるでしょう。
オラクルは座して、あなたの行動を監視しています。
そして、時にはあなたの行動に対して質問をしてくることもあるでしょう。
あなたの行動は全てオラクルの放ったスパイによってモニタリングされています。
つまり、あなたのゲームプレイの内容すべてがオラクルによって把握されている、ということになります。
エピソード1の最後には、様々な事実があきらかになります。
多くのゲームのストーリーラインは、クリエーターの用意したレールに沿って進行していくのが常ですが、SotAではエピソード1での行動如何によってその後のアバタールの運命が大きく左右されることになります。

GGG:
Blade of the Avatarを読んだのですが、この作品にはメタな表現が数多くありますね。
ゲームの舞台となる世界は一度崩壊し荒廃することになるのですが、これは(リチャード退社後の)Ultimaのタイトルとエレクトロニクス・アーツの姿になぞらえているのではないですか?
そして荒廃した世界を、ロード・ブリティッシュであるあなたが再び立て直す、と。

RG:
その通りです。
意図的にそういった表現を盛り込んでいます。
現在Ultimaの商標に関しては、私からはどうこういうつもりはありません。
すでに自分の中での決着はついているのです。
また、Ultima9ではブリタニアの崩壊が起こっていますが、これも意図的にそうしたストーリーにしています。
EAの数あるタイトルの中でも、UOはセールス的に最大のビッグヒットを記録しました。
しかし当時のEAはRPGタイトルに消極的で、その開発にはたくさんの困難があったのです。
当時はファンタジー映画の数も少なく、ロード・オブ・ザ・リングが企画段階に入ったくらいの時期でした。
当時のポピュラーな映画といえばマトリックスやそれに似た作品ばかりです。
ですから、ファンタジー系の作品は流行に合わないので、マトリックスライクなゲームを開発しろというのがEAの上層部の意見でした。

言い換えれば、EAのお偉いさんのせいで、Ultimaシリーズの開発は絶望的になってしまったのです。
Ultima9は[7-8-9]の三部作の最後の作品であり、また[1-3・4-6・7-9]の"三部作の三部作"のトリを飾る作品でもあります。
もはやUltimaシリーズの開発続行は絶望的な状況にあり、わたしは9を様々な意味で最後の作品とするべくデザインすることにしました。
そして私は追い出される形でEAを退社し、中世ファンタジーのゲームからもしばらく遠ざかることになります。

そして10年が経ち、状況は変わってきました。
衝撃的だったのは、一度は死んでしまったと思っていたファンタジー系統の作品の復権です。
一度は時代遅れと思われていたファンタジーの世界観が、再びポピュラージャンルへと返り咲いたわけです。
しかし、Ultimaのフォロワーといえる作品は現在も現れていません。
さらに、UOのような重厚なサンドボックススタイルとインタラクティブ性を合わせ持ったオンラインゲームも、ついに登場することはありませんでした。

Ultimaを離れた後に別のタイトルを手がけることもありましたが、ファンの熱い要望もあり、私はUltimaの後継タイトルを作るなら今が好機だと、新作を作ること決心しました。
Blade of the Avatarは過去(Ultima)と現在(Shroud of the Avatar)をつなぐブリッジの役割を果たす小説です。
過去から決別し、ロード・ブリティッシュとともに新たな世界の創造をすることがテーマになっています。

GGG:
ロード・ブリティッシュといえば、Ultima 7のときにゲーム内で結婚したり子供をもうけたりはしないの?という質問がありましたね。
その時あなたはこう答えました。

"ロード・ブリティッシュである私、リチャード・ギャリオットは結婚もしていないし、子供だっていないのだから、ロード・ブリティッシュも同様にすることはない"

現在あなたには妻も子供いるわけですが、今回はゲーム内ではそこらあたりはどうなるんでしょうか?

RG:
この件についてはここでは回答できませんね。
というのも、実はその件はForsaken Virtuesのプロットと関係があるんです。
ストーリーを進めていけば、ロード・ブリティッシュの結婚についてどうなるか明らかになるでしょう。
これは実際にゲームをプレイして確かめてみてください。

GGG:
SotAではテキストベースで会話が進んでいくようになっているそうですね。
UltimaやSierra社のアドベンチャーゲームで育った私には、テキスト入力による会話システムには期待しています。

RG:
ええ、きっと素晴らしいものになるでしょう。私も楽しみにしています。
このゲームの会話システムを担当しているのはスコット・ジェニングスです。
彼は私の期待している以上の素晴らしい働きをしてくれました。
従来のUltimaでは、NPCは会話文章中のあるひとつのワードだけに反応していたのですが、SotAでは文章中に複数の有効なワードがあっても、NPCは適切な反応を返してくれるようになっているんです。
たとえば、

"ハロー、私はリチャード・ギャリオットです。ここはどうやら酒場のようだね。もしそうなら、ビールをなんでもいいので一杯お願いします。"

という会話を投げかけたとしましょう。
するとNPCはまずこう反応します。

"やあこんにちは、リチャード・ギャリオットさん。"

この時点で、このNPCは私の名前"リチャード・ギャリオット"という言葉を記憶するようになります。
そして、その後の会話でも、私のことを名前で呼んでくれるようになるというわけです。
さらにNPCはこう会話を続けます。

"もちろんここは酒場さ。名前はFire Lotus's Tavern。もちろんビールもあります。さらに種類は24種類を取りそろえています。どれがお好みですかね?"

と、こういうレスポンスを返してくれます。
従来のような一問一答ではなく、有効な各ワード全てに対して一度に返答してくれるというわけです。

NPCとの会話において、プレイヤーが有効でないワードをNPCに話すこともあるでしょう。
そういったデータもすべて我々は収集し、もし頻繁に尋ねられるのに有効でないワードがあった場合、NPCがそれに反応してセンテンスを返すように会話データの更新を行います。
SotAにおけるNPCとの会話は、データ収集とアップデートを繰り返すことによってどんどんスマートなものになり、有効なワード数やレスポンスのセンテンスも増加していくようになっています。

GGG:
GGGのエピソード#91では、フェリシア・デイにインタビューを行いました。
彼女は大のUltimaファンだそうですね。彼女は詩の創作も手がけていますが、彼女の作品をご覧になったことは?

RG:
ええ実は私は彼女のファンなんですよ。
初めて作品を読んだ時に、ビビっと私のレーダーが反応しました。
色々な人からおすすめの作品を紹介してもらう機会は多いのですが、フェリシアの場合はこちらからYoutubeのチャンネルの動画や作品を見に行ったんです。
そしてそれらに触れるたびに、私は彼女のファンになっていきました。
そして彼女の活動スタイルは、将来のテレビメディア業界におけるお手本となると思っています。

私が彼女の作品とどう出会ったのかについてもお話しましょう。
私はDragonConのようなコンベンションが開催されたとき、そのコンベンションを訪れるファンは一体どういった人達なのか興味深く観察することにしています。
とあるアーティストのコンベンションでは、ブースの周りにぐるりと列が作られていました。
ある作家のブースの場合、ファンの数もまばらで、小さなブースの中で作家とファンが談笑したり、サインをもらったり、一緒に記念撮影をしたりしています。
私のようなゲーム開発者の場合でも、人の少ない作家のブースのような雰囲気です。
もちろん、そのゲームや開発者の知名度によって多少その数は増えることはありますが。
他の分野では、とりわけテレビや映画に出演しているような有名人のコンベンションでは、我々とはまるでくらべものにならないほどの数のファンが訪れます。

もちろんフェリシア・デイともなれば、訪れるファンの数は膨大なものになるでしょう。
私がDragonConのコンベンションに出席したとき、フェリシア・デイもトークショーに出演するために会場にいました。
彼女のトークショーのために、近隣のホテルの予約は一杯になりました。
フェリシアのIT活用術についてのトークを見るために、何千人もの人がDragonConへやってきたんです。
私もそのトークショーを見に行きました。
彼女が壇上に現れるやいなや、会場の聴衆の数はどんどん増えていきます。
テレビ放送だけを行って、こういったスターとファンとの交流を行わないようなテレビ局は、将来的に競争に敗れていくでしょう。

テキサス州オースティンで毎年開催されているコンベンション"RTX"のケースについてもお話しましょう。
今年のRTXでは、我々のブースではSotAのゲーム内でブルーVSレッドのチーム戦のイベントを行いました。
他のブースも盛り上がっていて、中にはフェリシアのトークショーよりも多くの人が詰めかけているブースもありました。
最近RTXの運営関係者は、以前オースティンにあった、とある大手のテレビスタジオが使っていた施設を購入しました。NBCだかCBSだかABCか、どのメディアだったかは失念してしまいましたが、とにかく大きなスタジオです。
現在、オースティンのような大都市でも既存の大手マスコミメディアが撤退せざるを得ないような事態が起こっています。
現在はこのインタビューのようなポッドキャストや、オンデマンドのメディアが台頭してきており、テレビ・ラジオ、あるいは映画といった、既存のメディアの重要度が低くなってきています。
消費者の要望にすぐに応えてくれる、消費者ベースの新しいメディアへのシフトが起こっているんですね。
既存のメディアが生き残るためには、この時代の変化に柔軟に対応する必要があるでしょう。

GGG:
Space Birdのリリースしたミュージックビデオ"Return of Lord British"についても意見を伺わせてください。
実は私もあのビデオのファンで、何回も繰り返して見ました。
あなたはどういった感想をお持ちになりましたか?

RG:
Kickstarter期間中にこのミュージックビデオが投稿されました。
私達のチームがもう一度Kickstarterで何か企画をやることになったら、もう少しスマートにやれると考えています。
もちろん資金調達は達成できたのだし、不満点らしい不満点はないのですが、我々のKickstarterの中で得た経験を生かせばさらに上を目指せると思うのです。
そのポイントのひとつとして挙げられることは、コミュニティとの親密な交流です。
われわれが行ったSotAの宣伝動画コンテストのような企画が必要なんです。
Kickstarterの終了の一週間前に、急遽この宣伝動画コンテストが企画されました。
Shroud of the Avatarをおおくの人に知ってもらうためのオリジナル動画をコミュニティから募り、優秀作品にはゲームの出資レベルのアップグレードなどが賞品として与えられます。
制作期間として与えられたのはたった3日間。急な企画だったので、投稿者は72時間で動画を制作しなければなりません。
それでもファンの方々は楽しんでやってくれたようで、我々のために貴重な時間を動画制作に割いてもらいました。
そして二日目の終わりになって、あるインパクトのある作品が投稿されました。
それはSpace Birdにとって最大のライバルとなった、Ember Isolte氏の作品です。
ゲームの世界観にあった中世風の雰囲気をもち、楽曲・リリック・歌唱力のいずれも素晴らしいものでした。
今までの投稿作品の中でも群を抜いたクオリティだったので、我々の誰もがこの作品が最優秀作品賞を取るだろうと予想しました。

そして最終日の最後の4時間になって、ついにSpace Birdの"Return of Lord British"が投稿されたのです。
このビデオを見た我々は思わず言葉を失ってしまいました。彼らの動画は素晴らしい完成度を持っていましたからね。
Emberの作品とSpace Birdの作品、どっちを最優秀賞とするかで随分悩みました。
結果としてはSpace Birdが競り勝ったのですが、それは宣伝用の動画として見た場合、どちらがより適しているかが争点になったからです。
マーケットに対してどちらがより効果的に訴えられるか、それをを考えた時にSpace Birdのほうへ軍配が上がったのです。
そして我々もまたこの企画を通じてSpace Birdのファンになりました。
そして後の彼らのKickstarter企画にも協力しました。
彼らは今もBlizzard Conや様々なゲームのコンベンションで楽曲提供を行っているようです。
彼らのバンド活動は成功し、今も私達のゲームに素晴らしい楽曲を提供してくれています。

GGG:
今はニューヨークの都市部に家を購入してお住まいだと聞いています。
わたしもニューヨークに住んでいるのですが、実に羨ましい話です。
こちらへ引っ越していた理由は何なのでしょうか?

RG:
結婚がきっかけになりました。
私と妻の出会いについてもお話しましょう。
私は宇宙旅行を終えたあと、セント・バーツ島(サン・バルテルミー島)へ仕事で行く機会がありました。
そして妻のレティシアはその時バカンスでこの島を訪れていたんです。
そこで私は仕事でスピーチを行ったのですが、その時レティシアはその場には居ませんでした。
そして、スピーチが終わってからの24時間の間、私はレティシアと偶然顔を合わせることになるんです。
まず、夕食後に彼女とゆっくり話をする機会がありましたし、次の朝食の時にも同じレストランでレティシアと出会ったのです。
そして次の昼食の時も偶然同じレストランでした。
さらにその翌日、小さな飛行機で島を後にするときにも、我々は同じ便に乗り合わせたのです。
つまり、この島にいるわずかな間に四回も偶然の出会いがあったわけです。
その後彼女はニューヨークへ、私はテキサスへ帰っていったわけですが、その時の縁からコミュニケーションは続き、ついに結婚へと結びついたわけなんです。
今から2年前の話になりますね。

GGG:
ニューヨークからテレプレセンス・ロボットを使ってオースティンのPortalariumとコミュニケーションをとっているそうですね。

RG:
ええ、このロボットは今までにもう2台も購入していて、さらに3台目も注文済みです。
私にとって、これはとても大切なものですからね。
オースティンとニューヨーク、どちらも等分に時間を割くようにしています。
ニューヨークにいるときも、朝起きた後すぐにデスクに座ってオースティンのテレプレセンス・ロボットの電源をONにします。
そして社屋のホールを移動して、もしミーティングがあればロボットを使って出席します。
もし予定が入っていないときでも、私はフルタイム体制でニューヨークのオフィスからこのロボットを使って社内をウロウロしていますよ。

GGG:
結婚式の時には、あなたのお母様もロボットを使って出席なされたとか。

RG:

ええ、そうです。
もともとこのロボットはその為に購入したんですよ。
私が妻との結婚を決めた時、妻は母国であるフランスでの挙式を希望しました。
フランスには妻の親戚たちがたくさんいたからです。
一方私の親戚の数は半ダース程度の人数しかいません。
ですから、式を挙げるのならフランスのほうが都合がよかろうと、フランスでの挙式が決まりました。
しかし私の母親は80を超える高齢ですし、フランスへの長旅は色々と不都合がありました。
そして第一、彼女は海外旅行に乗り気ではなかったのです。
そこで私は、

"よし、じゃあ最新のテクノロジーで解決してみよう"

と思い立ち結婚を決めたと同時に、私はこのロボットを注文しました。
しかし納品が式に間に合わないようなので、テレプレセンス・ロボットの初期型を結婚式で使うことに決めました。

結婚式はフランスの古城で行われました。
城にはインターネット回線がありませんでしたが、ヨーロッパの大手電話通信会社であるオレンジ社は

"あなたがたの結婚式の例をマーケティングに利用させていただけるなら、その古城でも使えるインターネット回線を用意する"

とオファーしてくれました。
私達はこのオファーを受け、古城でもワイヤレスでインターネットが使えるようになったのです。
回線エリアは式場を広範囲にカバーしているので、ロボットは式場からアフターパーティーの場所まで自由に移動可能です。
ロボットと一緒にダンスフロアで踊っている場面の写真は、今でも我々のお気に入りの一枚となっています。

GGG:
このロボットは見た目がセグウェイのようですね。

RG:
三台所有しているロボットは、すべて違うモデルなのですが、いずれも駆動の仕組みは同じです。
本体の下部にツールボックスがあり、これによって2つのホイールの駆動や自律のためのバランスを調整していいます。
本体の中央よりやや上にテレスコープがあり、上部にはコミュニケーション用のヘッド部分があります。
このヘッド部分のモニターには私の顔が表示され、さらに付属のカメラやマイクで向こうの映像や音声をひろうことができるんです。
マイクは高性能で、他の部屋の物音も聞き取ることができます。
このスクリーンの矢印キーとマウスを使ってロボットを動かすんです。
残念ながらドアを開ける機能はありませんが、遠隔地であってもまるでそこに居るような気分にさせてくれる、素晴らしいロボットです。

GGG:

アームのようなものがついていないのですね。エレベータのボタンも押すことができないのですか?

RG:

ええ残念ながら。
いつかそういった機能を備えた製品が登場することを心待ちにしていますが、まだそのメドは立っていないようです。
また、エレベータは鉄の箱のようなものなので、ワイヤレス電波が届かなくなってしまう問題もあります。
ロボットの使用する回線をワイヤレス4Gに変更して動作テストをしてみたのですが、屋外での使用では問題なかったものの、依然としてエレベータでの運用は難しいようです。

GGG:
Shroud of the Avatarの開発スケジュール状況について教えてください。
開発予定期間である2年間を超過するのでは?

現在、今年の年末のリリースを目標にスケジュールを組んでいます。
このゲームはマルチオンラインロールプレイングゲームなので、なるべく長く皆さんに遊んでもらえるように調整するつもりです。
そして現在、エピソード1の制作のために数百万ドルの予算を組んでいます。
最初のエピソードのストーリーを完成させ、サンドボックス型のマルチプレイ環境を用意し、さらにそれらの要素をドッキングさせます。
そして、エピソードが進行するたびに新たなプレイコンテンツが導入されます。
たとえば、エピソード1では船は港に停泊したままですが、後のエピソードでは船による航海が可能になる予定です。
さらには空を飛ぶ乗り物も登場するかもしれません。
また、SotAではキャラクタークラスは存在せず、プレイヤーが自由にキャラクターメイキングを行うことができます。
エピソード1でできることはまだまだ限定的なものであり、モンスターやロケーションも限られた範囲のものです。
エピソードが進行するごとに世界は広がり、できることも多くなっていきます。
もし無事にエピソード5までリリースすることができたら、その時にまた次の企画を考えることにしています。

GGG:
船での航海は多くの要望がでているのでは?私も気になっています。

RG:
エピソード1では航海のコンテンツは実装されません。
エピソード2での実装を予定しています。
現在のところ、実際に船での航海のコンテンツを制作するとして、それが技術的にどの程度難しいのかといったことさえ把握していません。

GGG:
Shroud of the Avatarに興味のあるユーザーは公式サイトをチェックすればよいのでしょうか?

RG:
Www.shroudoftheavatar.comへアクセスしてください。
伝統的なロールプレイングゲームとUOのようなマルチプレイ体験、そしてそれらを融合して新しい世代のゲームとしての磨きをかけ、RPGの新しい時代を切り開いていきます。

GGG:
素晴らしい!
残念ながらこれでインタビューの時間は終了となってしまいました。
リチャード、今回はどうもありがとうございました。
あなたへインタビューができるなんて、まるで夢のようです。

RG:
ありがとうデビット、こちらこそ素晴らしい時間を。

GGG:
Ultimaシリーズには本当に楽しませていただきました。
SotAの成功を願っています。

RG:
サンキュー。


----------------------------------------------------------------------


0 件のコメント:

コメントを投稿

■過去記事アーカイブ